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 ハロウィン・ナイト


 あなたにだけ、誰にも知られていない秘密を教えましょう。
 いえ、もしかしたら、知っている人は知っているかも。ハロウィンの夜に仮装した魔女や吸血鬼、ミイラ男や狼男といった者たちの間に、実は本物が交じっていることを。
 ええ、本物です。正真正銘の魔女っ子が他でもない、私です。
 はじめまして、こんばんは。自己紹介をさせてください。私は見ての通り、ピチピチ可愛い魔女っ子キャサリンです。
 おや、どうかしました? 驚いた顔をして。魔女に見えませんか。黒のワンピースとか、とんがり帽子にホウキなんて、見るからに魔女っ子でしょう?
 この黒のミニスカワンピ、可愛いと思いません? 魔界で大人気のブランド「ルシフェル」の新商品なんですよ。即日、完売した品なんです。はい、もう、開店前から並んでゲットしました。今日のために、三ヵ月お小遣いを貯めて、買っちゃいましたよ。
 え、だって、地球の人に魔界の人間が野暮ったいって思われたくないじゃないですか。
 まあ、ミイラ男さんのせいで、魔界人はかなりダサイというイメージがついてしまっているのもしょうがないと思っていますが。
 ええ、だって包帯だけってファッションは、ちょっと頂けないですよね?
 ああ、良かった。あれが魔界の流行ファッションなんて勘違いされていたら、泣いちゃうところでした。
 あ、話を元に戻しますね。
 今宵、一年に一度だけ、魔界と地球の間にある結界が消えるんです。世界を仕切る壁が消える――厳密に言うと、私たち側からだけ出入り自由になります。
 ハロウィンの夜だけ、魔界の住人は地球に降りることが可能になります。あ、壁というのは少し変ですね。そう、魔界は実は、地球の空の上に在ります。魔界の住人は時々、地面に掘られた穴から地球を覗いていたりしているんですよ。
 でも普段、穴の底は……そうですね、望遠鏡のレンズを想像してみてください。ああいった透明の固いもので塞がれているんです。だから覗き見は出来るんですが、地球側に手を伸ばしても触れることができるのは、世界を仕切るレンズだけです。
 だけど、今日だけはその仕切りが消えてしまうんですよ。だから魔界から穴を通って、地球に遊びに来ちゃいました。
 というわけで、

「Trick or treat! (お菓子くれなきゃ、イタズラしちゃうぞ!)」

 ええ? お菓子を用意していないんですか。折角、地球人と遊ぼうと思って、言葉の勉強してきたんですよ?
 何を言っているんですか。ここは地球で、私がいるところは魔界ですよ? 言葉も習慣も違います。当然、話を合わせようとしたら勉強が必須ですよ。
 私たち魔界人がこうして地球人のなかに紛れ込めるのは、他でもない。一年に一度、たまたま世界が繋がる日がハロウィンだったからです。
 でなければ、地球は吸血鬼やミイラ男の襲来に大パニックになっているはずでしょう? まあ、帰る時間を忘れて地球に取り残された吸血鬼さんたちが、こちらで物語になっていたりするようですけど。ええ、そのお話は多分、魔界のうっかり者さんですよ。しかも地球人を怖がらせたりして、懲罰ものです。だから、魔界に帰って来られなくなったんですね。
 あのですね、魔界ではこの日に地球に遊びに行くのは許されているんですが、一つだけ絶対に守らなければならない決まりがあるんです。
 それは「地球人を怖がらせてはならない」です。
 ミイラ男や狼男が町中を闊歩していたら、地球人はきっとビックリして心臓麻痺を起しちゃいます。そうなったら、色々と大変でしょう? 魔界的にも困ることになるんです。
 だから地球に遊びに行きたい魔界人たちは、地球人を驚かせないように色々と勉強するんですよ。
 そう、魔界人が地球人を驚かせずにこちらの世界に紛れようとしたら、やっぱりハロウィンの風習を最大限に利用することが一番と、結論が出るわけです。
 ガイドブックにも載っていました。一番安全なのは、現地人に見せることって。
 今日、私の魔女っ子ファッションだって、地球人が持つ魔女っ子のイメージを壊さないよう、細心の注意を払ったんですよ。
 本当は、私だってピンクのワンピが良かったです。
 もう、楽しみにしていたのに、お菓子を用意していないなんて、期待外れもいいところです。がっかりだな。
 あの、つかぬことをお伺いしますが、もしかして、地球ではハロウィンはそんなに流行っていないんですか?
 そうだとしたら、「地球散策ガイドブック」を執筆した人に抗議の手紙を書かなくっちゃ。
 ああ、あなたがそういったことに興味がないだけなんですか。それは残念です。ちょっと地球のお菓子、食べたかったな。入ってくる窓、間違えましたかね。
 え、食べたいなら買えばいい?
 もうっ! あなたは私の話を聞いていましたか? 何を怒っているかですって? 怒りますよ。だって、あなたってば私の言うこと一つも信じていないでしょう?
 半信半疑? 全部疑っているわけではないということですけれど、どうして半分は信じてくれるんですか。
 なるほど。確かに高層マンションの十五階に、ホウキに乗って可愛い女の子が現われるはずありませんものね。
 どうしました? え、自分で可愛いなんて言っちゃうことに呆れているんですか? ふーん。地球人は自分のこと、自慢しないんですか。駄目ですよ、主張すべきことはきちんと言っておかないと。あとで後悔しても遅いんですから。
 あ、確認したいんですが、いいですか?
 私、もしかしたら地球人から見たら可愛くないんでしょうか? 結構、容姿には自信があるつもりなんですけど。これでも美容には気を使って、毎日煎じ薬を飲んでいるんですよ。飲めば十歳は若返るという魔女秘蔵の美貌薬、苦いんだけどよく効くんです。
 あ、笑いましたね? 信じていないんでしょ?
 薬なんて頼っているとは思えないくらい可愛い?
 へえ、地球人もなかなか口が巧いじゃないですか。ちょっと許してあげます。あなたはふふふ、私好みのイケメンですし。
 えっ、もう五十にもなるオジさんですって? カッコいい人は幾つになってもイケメンですよ。
 はい、地球の流行り言葉もガイドブックに載っていました。ちゃんと意味も知っているので、自信を持ってください。
 あなたは魔界に行っても美男子で通ります。もっとも、地球人は魔界には行けませんけれどね。
 それは残念? いえいえ、残念がることはありませんよ。魔界は、地球に比べたらきっとつまらないところですから、あなたは地球生活を満喫してください。
 私も今宵だけは地球を楽しませて貰います。そういうわけで、今宵のお相手、お願いしていいですか?
 ええ、あなたと話していて、楽しいです。だから、お願いします。無理強いはしませんけれど。
 OKですか。良かった。
 えっ? さっき怒ったのは何だったですって?
 だって、私は魔界人ですから地球のお金なんて持っていませんよ。だから、買って食べろなんて言われても、無理なんです。
 あなたが私のことを魔界人だなんて信じていなくて、適当にあしらおうとしているんだと思ったら、ちょっとムッとしてしまいました。
 わかってくださったのならば、いいんです。私のほうこそ、怒ってごめんなさい。短気はいけませんね。お菓子に執着しているなんて子供みたいに思われるのもあれですし。
 え、お菓子はないけれど、お茶を御馳走してくださるのですか? ありがとうございます、お言葉に甘えさせてください。
 窓からですが、お邪魔します。あ、靴は脱がなくても大丈夫ですか?
 わあ、結構綺麗に片づけられているんですね。もしかして、お掃除大好きですか? ああ、通いのハウスキーパーさんにお願いしているんですか。
 妙にガッカリした顔をしている? いえ、お掃除大好きさんでしたら、魔女っ子としてはホウキ話をネタに会話が楽しめるのではないかと思いまして。
 皆、ホウキと言っては何でも一緒くたにしてしまいがちですが、ホウキにも色々と――あ、やっぱりこの話は止めておきましょうね。
 いえ、みなまで言わなくても「ホウキ話のどこが面白いんだ」と顔に書いてありますよ。
 気にしないでください。あなたがホウキ愛好家でなかったことは誠に残念ですが、ホウキという奥深い文化は、とてもじゃないですが一夜で語り切れるものではありませんからね。
 秋の夜長と申しますが、夜が明ける前には魔界に帰らなければいけませんから、私の話よりあなたに地球のお話を聞きたいです。
 あ、ありがとうございます。良い香りがしますね。お砂糖ですか、では五つ入れてください。入れ過ぎじゃないかって? そうですか? 私はいつもそれぐらい入れていますが。もしかしたら、魔界人の味覚は地球人と違うのかもしれませんね。
 では、お紅茶を頂きます。ドキドキしますね。さっきの味覚の話ですよ。もしかしたら、凄く変な味がするんじゃないかって、心配しちゃって。
 あ、美味しい。魔界でもこれほど美味しい紅茶を入れる魔界人には会ったことはありませんよ。いえいえ、お世辞ではなく、本当に美味しいです。身体が温まりました。秋の夜風は少し冷えますね。正直、ミニスカートは失敗したような気がしていたんです。
 やっぱり魔女と言えば妖艶、人を魅了するってイメージがあるでしょう? だから、若さを全面的に主張することで生足勝負に出ようかと。
 え、変な奴をその気にさせたら危険ですって? 大丈夫ですよ、そのときはホウキに乗って逃げますから。ああ見えて、私のホウキは流れ星も真っ青の音速飛行が可能なんです。
 いえ、真面目な話です。
 面白いですか? そう言われたのは初めてですね。魔界では私みたいな可愛いだけが取り柄の魔女っ子はあまり目立ちませんよ。何しろ、周りはミイラ男さんや狼男さん、吸血鬼さんがウヨウヨですからね。
 ね? 魔女なんて、彼らに比べたらあまりに普通すぎます。
 私のことよりあなたのことを聞かせてくださいな。
 何から話していいのかわからない? では、私の方から質問していいですか。
 あの写真に映っているのはあなたですよね。あなたの隣で笑っているのは奥さんでしょう。当たりですか、やっぱり。あなたみたいな優しいイケメンさんが独りだとは思えなかったので、ちょっと推理してみたんです。ふふふ、私って名探偵みたい。
 え、指輪を見れば誰でもわかる? そうですか? 魔界人の場合は下僕の可能性が含まれるんですよね、吸血鬼さんとかだと、お気に入りの美男美女を何十人も侍らせたりするのはざらですし、あちらでは奥さん恋人と云う観念もないので、私的には結構名推理だと思ったんですけど。
 わかってくだされば、よろしいです。ええ、本当に、文化と言うか、世界が違いますね。こんなことを発見できるのも、地球に降りたからこそだと思えば、冒険してみて良かったです。
 話を元に戻しますが、奥さんは御在宅ですか。いえ、あなたのご都合が悪くないのならご挨拶をしておいた方がよろしいかなと思いまして。
 だって、細君がいらっしゃる旦那様が見知らぬ美女と二人きりで、楽しい夜を過ごしたとなれば、後々問題が発生しませんか。
 心配は御無用? ああ、奥さんは既にお亡くなりになられたのですか。それは、どうして? いえ、立ち入ったことを聞いてしまいましたね、ごめんなさい。
 謝らなくていい? そう言って貰えると、心が救われます。
 そう、事故だったのですか。 居眠り運転のトラックがあなたたちの車に突っ込んできて? 奥さんだけ……。それは本当に、お悔やみ申し上げます。
 そんな顔をしないで、笑ってくれと?
 え、私が奥さんに似ているんですか? お喋りなところも、甘党なところも? へえ、奥さんも紅茶に角砂糖五個入れちゃうんですか。奇遇ですね。でも、写真を見る限り、私の方が可愛いと思いますが。
 ああ、すみません。つい、魔界の癖が。こういう場合は謙遜するのが、地球風なんですね。一つ勉強になりました。
 まあ、確かに私の方が二十歳は若く可愛いですって。そういう素直なところは地球人の美徳でしょうか、それともあなたに限ってかしら。口が巧いですよね。きっと、あなたは女性にモテるのではないですか?
 そんなことはない? いまも独り?
 でも、それはあなたが奥さんのことを忘れられずにいるからではないのですか。すみません、立ち入ったことを口にして。
 ただ、奥さんのことを話したあなたの表情が凄く寂しそうに見えたから。
 ええ、とても寂しそうに見えました。
 駄目ですよ、そんな隙だらけの顔をしていたら、魔界だったら大変なことになっちゃう。色々と付け入られます。私は良心的な魔女っ子ですから、悪さはしませんけどね。悪魔さん辺りだと、あなたの魂を抜きとってしまうでしょうから、気をつけてください。
 え、別に、捕られたって構わない?
 何でそんなことを言うんですか。駄目ですよ。悪魔さんは本当に怖いですからね、魂を捕ったところで直ぐに楽にはしてくれません。じわじわと苦しめて、ええ、苦しめるんです。そうすると魂の色がね、変わるんですよ。そうして色が変わった魂はかなり美味しいらしいです。さんざん苦しめて、食べちゃうんですから、最悪です。
 食べられてしまうのだったら、苦しみも終わるからいいじゃないかですって?
 馬鹿を言っちゃいけません。第一に、悪魔さんの寿命は魔界の中でも長寿なんです。だから、あなたは二、三日ぐらいの想像をしているみたいですけれど、とんでもない。十年、二十年はざらで、中には百年近く魂を痛めつける陰湿な悪魔さんもいます。まあ、それが悪魔さんの悪魔さんたる悪魔的習性なのだと思いますけど。
 さすがに嫌でしょう? 百年も痛めつけられるなんて。だから言ったじゃないですか、じわじわと苦しめるって。
 何だか、あなたは悪魔さんに食べられたがっているみたいですね。
 何か、嫌なことでもあるんですか。ひょっとして、さっきあなたが窓から身を乗り出していたのも……もしかして、飛び降りるつもりでした?
 …………や、やだな、黙ってしまったら図星を突いたみたいじゃないですか。
 私としては冗談を言ったつもりなのに、そこは笑い飛ばしてくださらないと。
 もう、本気だったんですか? お酒なんて呑んでいませんよね。
 信じられない、どうしてそんなことをするんですか。地球人は空が飛べるなんて、聞いたことないですよ。落ちちゃうでしょ!
 駄目ですよ……そんなこと。あなたが奥さんに会いたいからって、そんなことしても奥さんは悲しむだけでしょう。
 わかったようなことを言うな? 言いますよ。だって、あなたが自殺してしまったら、奥さんは悲しみますもの。
 信じてくださらないようなので、種明かしをします。
 魔界がハロウィンの日だけ地球に繋がると言いましたよね。ハロウィンが地球でどんな日なのか、勿論、ご存知ですよね。
 そう、死者が還ってくる日。
 あのですね、魔界というのは地球人が天国とか地獄とか言っている世界なんです。だから、魔界人が地球人を驚かせて心臓発作を起こされてしまったら、魔界も大変なことになると話しましたよね。
 ええ、そうです。魔界に沢山の魂がやって来ることになるから、困るんです。そうして、「地球散策ガイドブック」も他ならぬ、地球からやって来た魂が書いたものなんですよ。
 はい、そう、実は私、あなたの奥さんに頼まれていたんです。ついでで良いから、あなたの様子を見てきてくれ、と。
 あなたの性格からしたら、自分を責めているかも知れないと言われました。あの日、あなたが眠たいという奥さんを無理やり、ドライブに連れ出したから。
 ええ、でも。奥さんはあの日のドライブはとても楽しかったと、私に話してくれましたよ。
 だから、あなたには責任を感じたりしないで欲しいと、奥さんは祈っていました。そんな心に打たれて、良心的な魔女っ子の私は、奥さんのお願いを聞くことにしたんです。
 そうしたらあなたは、窓の手すりを乗り越えて飛び降りようとしているじゃないですか。私ビックリして、様子を見るだけだったのに、思わず声を掛けてしまいました。
 そんなわけですから、奥さんが悲しむというのも本当です、信じてください。
 えっ? 死者が還って来る日だったのなら、どうして奥さんが直接、あなたに会いに来ないのかですって?
 会いたくないわけじゃないですよ。むしろ、会いたいから、会えないんじゃないですか?
 だって、たった一日ですもの。
 魔界の住人は、ハロウィンの夜が明ける前に魔界に帰らなければならない。もうこの世の人ではない奥さんにしたら、また別れるのは辛いでしょ? 第一に、ハロウィンを過ぎた死者の魂が地球でどうなるのか、わかりませんもの。奥さんとしては、魔界からでもあなたを見守っていたいんじゃないんですか。
 そう、あなたが寂しいと思うように、奥さんも寂しいですよ。
 会いたくて、会いたくて、会ってしまったら、きっと帰りたくなくなるから…………だから、あなたには直接、会わないことを決めたんです。
 影から、あなたの様子を見るだけと決めて。
 それなのに、あなたときたら――あ、すみません。まるで、奥さんみたいな口を利いてしまいましたね。
 いえ、多分、そんな気持ちで奥さんはいるんじゃないかなと、推測です、推測。やだな、何ですか、その疑るような目は。
 ――わ、私があなたの奥さんじゃないかですって? 冗談は止めてください。私はピチピチの魔女っ子キャサリンですよ? 写真の奥さんを見る限り、どう見ても私の方が若いじゃないですか。
 えっ、よく効くと言った魔女の美貌薬で若返ったんじゃないかですって? 私、そんなこと言いましたか? いやだな、冗談でしょ。そういうのは薬の売り文句で、実際に効果があるわけじゃないですよ、ええ。
 だってそんな、実は二十歳近くサバ読んで若作りしているだなんて、バレたら恥ずかしいことしませんよ。
 第一に、魔女っ子だとか、そんな設定を作って別人になり済まそうとしているなんて、細かすぎでしょう。魔女っ子って何ですか、キャサリンって誰?って話になってくるでしょ。今までの私の言動に突っ込みまくらなければならなくなっちゃうでしょ!
 ありえませんから、絶対。
 何を焦って言い訳して、涙目になっているのかですって?
 そういう目敏いところ、昔から変わっていない――いえいえ、何でもありません。お願いですからそれ以上、突っ込まないでください。
 大体、即興で作った設定で墓穴掘りまくって我ながら恥ずかしくて、憤死しそうですから。
 本当に、空気読めって、言われませんでしたか。
 こういう場合は、気づかないふりをするのが親切というものですよ。そうしたら、夜が明けるまで、一緒に居られるんですから。
 ――そう。
 それにまた来年、お菓子を用意しておくから遊びにおいでとか、さりげなく約束してくれたら、笑顔でお別れできるじゃないですか。
 そしたら、私も来年のハロウィンを楽しみに待てるでしょ?
 さっきも言ったように、魔界はつまらないところなんですよ。
 でも、あなたが地球にいて、生きているあなたを見守ることが、奥さんにとってつまらない魔界の毎日も、つまらない日々じゃなくなるんです。
 あなたがここで生きることに、意味はあるんですよ。
 だから、ね?
 あ、はい、お茶のお代わりお願いします。え、来年はパンプキンパイを用意しておく?
 へえ、いつのまにお菓子作りをするようになったんです? これから習う? それはとても楽しみですね。美味しいパイを期待していますから、頑張ってください。
 ついでに、地球のお土産話も沢山、仕入れておいてくださいね。魔女っ子キャサリンが責任を持って、あなたの奥さんに伝えますから。

 ――あなたは元気だよ、って。


                           「ハロウィン・ナイト 完」



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