番外編・その1

「クレインさんに、お願いがあります」
「何よ、管理人さん。えらい真面目な顔して」
「その管理人さんと言う呼び名を変えて頂けないでしょうか?」
「変えるったってねぇ。俺……顔覚えるのは得意だけど、名前はホント、覚えられないんだよねぇ」
 じっとアレフを見上げて、クレインはポツリと呟いた。
「管理人さんの目ってさ、青虫の色だよね」
「……む、虫……?」
「決めた、青虫さんにしよう。うん、これなら覚えられるよ」
「──すみませんっ! ごめんなさいっ! なかったことにして下さい。馬鹿なことを言いました、今まで通り、管理人でよろしくお願いします。それではっ!」
 アレフが出て行った後、ドリィがやって来た。
「何かあったの? アレフ管理官、泣いていたけど」
「さあ? それより青虫って可愛いくねぇ?」



番外編・その2

「アレフ管理官、管理人さんって呼ばれるの、まだ、マシなほうだと思うよ」
「そうでしょうか?」
「うん、この間、クレインさんの話を聞いていたらね、ロウソクなんてあだ名をつけられた人がいるらしいんだよ」
「ロウソク……何ゆえの命名なのでしょう?」
「その人、白いスーツを着ていたんだって。それで、赤毛だったんだって」
「…………」
「ね? ロウソクさんより、ずっといいよ、管理人さんって。親しみやすくって、とてもいいと思うな」
「一応、自警団を束ねる身としては、親しみより畏怖を覚えてもらったほうが良いような気がするのですが……そうですね。ロウソクよりは、ずっと良いですね」
 バタンとドアが開いて、クレインが顔を覗かせた。
「ああ、ちょうど良かった、青虫さん」
「…………管理人です。お願いですから、管理人と呼んでくださいっ!」
 泣いて走り去っていくアレフを呆然と見送って、クレインは呟いた。
「何でだ? 可愛いじゃん、青虫」

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