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蒼天の君・小話


くだらないことは、請合います。
読後については責任を持ちませんので、あしからず!




「殿下と騎士」編

「エスクード、お前が私に仕えるうえで知っておくべきことが三つある」
「三つですか?」
「そう、まず第一に私はこう見えて結構、寂しがり屋だ」
「…………」
「適度に構ってくれないと、寂しくて拗ねるので注意しろ」
「面倒臭い性格ですね」
「で、第二に」
「無視しました?」
「幾ら寂しいと言っても、夜の添い寝に男は要らん」
「呼ばれても、絶対に行きません」
「第三に、私は結構お茶目なので、冗談は笑って許せ」
「殿下の護衛騎士となる名誉を謹んで、辞退してもよろしいでしょうか」
「ふむ。なかなか面白い冗談を言うな! 気に入ったぞ」
「結構、本気だったのですが」
「またまた」



「お願い」編

「殿下でしょうっ! アリスが欲しいものや用事があったときのために用意しておいた紙に、変なことを書いたのはっ!」
「何を突然、証拠もなく私に濡れ衣を着せるか、エスクード」
「殿下以外にいるわけないでしょ。『お早うのチューをして』なんて、書く人間はっ! 危うく、実行しそうになって恥をかくところでしたっ!」
「実行しそうになる前に、気づけ……」



「若者の悩み」編

「まったく、どうしようもない弟を持って苦労するな、エスクード」
「心配してくださり、ありがとうございます」
「うむ、苦労しすぎてハゲるなよ」
「ハゲません! 殿下のほうこそ、その長髪。いずれ、髪の重みに抜け毛が増えますから、お気を付けください」
「なんとっ?」



「敬意?」編

「前々から殿下が言われていた空中散歩の件ですが、フレチャに俺やアリスが殿下に世話になっていることを話して、承諾して貰いました」
「うむ。フレチャもようやく私を乗せてくれる気になったか」
「ええ、敬意を持って、殿下を咥えて飛んでくれるそうです」
「待て。咥えてというのは、何だ? 背中に乗せてくれぬのか」
「やはり、背中には俺やアリス以外には乗せたくないということなので、口で。嫌でしたら、尻尾に巻いて飛んでもよいとのことです。ああそれとも、爪にでもぶら下がりますか?」
「…………そ、そこに、敬意はあるのか?」




「若者の悩み・その2」・編

「見たぞ、エスクード」
「何ですか、殿下。藪から棒に……」
「昨日、私の執務室でアリスと二人きりでコソコソしていただろう。まったく、主をのけ者にしおってからに」
「……ああ、申し訳ありません。しかし、こればっかりは殿下にお伝えしがたいことですので」
「くっ、何だ? もしや、夫婦の危機がっ?」
「違います。(アリスと一緒に、城の皆に内緒で贈りものを考えていたとは言えないからな)……実はアリスが殿下のお席を掃除しているところ、何だか抜け毛が多いということでして。殿下の若はげが進行しているのではないかと心配していただけです」
「なんとっ? そんな馬鹿なっ! 私がハゲてるだとっ?」
「…………(ここまで真顔で驚かれると、冗談ですとは言いにくいな)」




「若者の悩み・その3」編

「…………エスクード……」
「どうしました、殿下。何だか、顔色が悪いようですが」
「うむ。少し相談に乗ってくれるか」
「俺でよければ」
「実はな、今朝がた起きたら枕元に髪が、一本抜けていたのだっ!
「…………? (それぐらい普通だと思うが……何だ?)」
「このまま抜け毛が続いてしまったら、私はどうしたらいいっ? 一日一本ということは、十日で十本、百日だと百本も抜けることになる、百本も抜けたらさすがにハゲてはいないと、言い訳できないではないかっ!」
「……いや、あの、殿下? (まずいな、気に病み始めてる……今さら、冗談だったとは言えない。というか、このまま気にし続けたら、本当にハゲるかも……)」




「若者の悩み・その4」編

「殿下。先日の悩み相談の件ですが」
「うむ……何か妙案はあったか?」
「ええ。どうぞ、この液体をお飲みください。これはアリスの世界に伝わる育毛促進薬だそうです。何でも髪が生えるのを活性化させるということですから、髪が抜けたところでカバーできます」
「何とっ? そんな素晴らしい薬がアリスの世界にあるのか。そう言えば、あちらは高度文明を誇っているのだったな。では早速、頂こうか。飲めばいいのだな?」
「はい」
「――うむ、何だか爽やかな味がして、身体が正常化するようだ。頭の方にも効いてくるような……髪が一気に若返ったような気がするぞっ!
「それは良かったです(……ただの水なんだが。意外とのせられやすいんだな、この人)」




「正しい夏の過ごし方」編

「夏場になるとさすがに蒸してくるな。アリスも、思いきって服を脱いで、私のヌードモデルなどしてみないか。涼しくなると思うぞ」
「――殿下、斬られたいですか?」
「……うむ、何だか今の失言で、私の背筋が凍った気がするな」




「相方」編

「くっ、何たる由々しき事態っ! 私の留守中にエスクードの奴、エスパーダに乗り換えただとっ?」
「あのですね、殿下。人聞きの悪いことを大声で言わないでください。というか、何ですか、乗り変えたっていうのは」
「勿論、漫才の相方だっ! エスパーダの前で、嬉々としてボケをかましたらしいではないか。くっ、私に断わりもなく、相方を変えるなど……しかもいつから、ボケ担当になったんだ?」
「…………俺はどこから突っ込めばいいんですか?」



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