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 56,君が生まれた意味


 あの日に拾った、小さな命は暗い絶望だけが支配していた人生に光をともしてくれた。
 だからこそ、知りたいと、レイテは思う。
(何故……あの子を捨てたのですか?)


「……先生、先生、どこ?」
 眠気眼をこすって、ルーはレイテの姿を捜す。
 グレースとミーナの結婚式の当日、レイテとルーはそのままグレースの家に泊まりこんだ。そうして、目を覚ましてみれば、新婚夫婦の姿は見えるけれど、レイテの姿がない。
「先生?」
 ルーはグレースの両親が使っていたという寝室に舞い戻り、レイテが寝ていたベッドの下を覗いてみる。勿論、そんなところにいるはずはない。
「先生? どこにいるんですか? どこっ!」
 再び、居間にやって来たルーは声を張り上げる。台所から驚いたグレースとミーナが飛び出してきた。
「嬢さん、若様は用事があるって出掛けたスッよ」
「どこに? どうして、俺を連れて行ってくれないの?」
「それは……」
 グレースは口ごもる。
 レイテが出掛けた先はグリーデンの街だ。そこにいる赤毛に赤目の男性に、彼は会いに行った。その男がルーの血縁者であることを確認するために……。
 その事実をルーに告げてよいものか、グレースは迷う。
 ルーは捨て子だ。赤ん坊のときに、レイテの城の前に捨てられていたという。
 レイテは最初、自分に捧げられた生贄だと思ったようだが、よくよく考えてみて、その可能性は却下した。
 グレースは昨晩、レイテと交わした会話を反芻する。


「生贄だとすれば、不自然なのですよ」
「不自然?」
「僕は人を喰らうと、ガーデンの街の住人に恐れられているわけです。そんな僕に、小さな赤ん坊は、あまり食べがいのあるものではないでしょう?」
「……普通の食事に例えてみれば、腹を満たすには不十分スッよね。赤ん坊の肉なんて、大人に比べてみれば特大のステーキと、その一切れっていうくらいのボリュームの差。そんな感じスッね」
「ふくよかで、柔らかそうではありますがね」
 肩を竦めるレイテに、グレースは苦笑した。
「今までの生贄から見ても、ルーは異例です。前例がない故に、不自然なのですよ」
「……今まで」
「皆、十代後半から二十代前半の方々でした」
「……人間として一番いい時期って感じスッね」
「長い月日の間に、決まりごとができ上がったのではないでしょうか。生贄はその年頃からと、ね。それに、ルーが生贄であったのなら、誰があの子を僕の城まで連れてきたのか」
「……連れてきた? ああ、赤ん坊だから、そりゃ、誰かが連れてこないと……」
「誰が連れてくるのでしょうね? 自らもまた、レイテ・アンドリューの餌食になってしまうかも知れないのに」
「…………あっ」
 グレースはレイテの言いたいことがわかった気がした。
「今まで、誰も付き添いなんかいなかったスッね?」
「ええ。だから、最初の少年は殺される羽目になったのです」
 微かに目を伏せて、レイテは痛みに耐えるように唇を噛んだ。
「僕自身が城に迎え、そうして僕自身の手によって彼を街へと帰した。ですが、誰も少年が僕の城へ入ったことを見てはいなのですよ。故に、彼は逃げ帰ってきたと誤解されて殺される羽目になった。……生贄が一人で十分だという保証もないところへ、付き添って行くことなどできなかった。随行する者もまた、生贄と見なされる危険性があったのですから」
 ある程度のところまでは、生贄を見張る者もいたのだろう。だが、城の近くにまで随行する勇気のある者はいなかった。
 それは、今も昔も変わらない。
 唯一、違ったのはルーが捨てられたそのときだけだ。
「……赤ん坊なら逃げ出す心配もない。ですが、生贄として捧げるために、同行する者が必要です。でも、同行者が安全に帰ってこられる保証なんて、一つもなかった。これはどう考えても、不自然でしょう?」
「そうスッね。そんなの変スよ。じゃあ、嬢さんはやっぱり、捨て子……」
「そこまで行き着くと、誰がルーを僕の元に置き去りにしたか、わかってきます」
「誰スッか?」
 グレースはレイテのほうに身を乗り出した。
「僕に差し出された生贄ですよ。僕が人間など、食べないということを知っている人です。でなければ、ルーを捨てる際に、自らも殺されてしまう可能性があるわけですから、わざわざ、僕のところまで捨てに来る必要などない」
「ああ、そうスッね。それだったら、どこかの施設に預けたほうがいい。最も、その手の施設ってあんまり、環境が良くないって話スッよ」
 グレースは眉根に皺を寄せて顔を顰める。
「……だからこそ、僕にルーを預けたのでしょう。生贄となった彼にお金を持たせて、人生をやり直すようにと諭した僕は、さぞかしお人好しに見えたのでしょうね」
 自嘲気味にレイテは笑うが、グレースは師匠のお人好しを知っているので笑えない。
「彼はとても印象的な赤い髪と赤い瞳をした少年でした。五十年ほど前の生贄です」
「……それが嬢さんの家族……」
「間違いないでしょう。年齢的なことを考えれば、ルーは彼の孫に当たるかもしれない。何にしても、グレースさんにはお手数をおかけしました。明日にでも、彼の元を尋ねてみようと思います。そこで、相談なのですが、明日一日、ルーを預かってもらって良いですか?」
「嬢さんを?」
「ルーを連れて行くことはできないでしょう? あの子にこの事実を話すのは機会を見てからにしようと思っています」
「若様……。その男を見つけて、どうするつもりスッか?」
「一つ、尋ねたいことがあるのです。それと、彼に言いたいことがね」
 レイテはそう呟いた。


「何故……あの子を捨てたのですか?」


「嬢さんっ!」
 グレースはルーの中で魔力が膨れ上がるのを察して、少女の腕をつかんだ。
「若様を追っちゃいけないスッ!」
 移動魔法を発動しようとするルーを強い声で制することで、少女の意識をそらす。案の定、集中が崩れ、ルーは魔法を構成できない。
「どうして? 先生はずっと一緒に、って約束してくれた。先生がいるところに、俺も行くよっ!」
 ルーが噛み付くように反論してきた。その姿にグレースは違和感を覚える。
(……何か、様子が……)
 戸惑うグレースに、ミーナが口を開いた。
「グレース、ルーちゃんは昨日、あなたとレイ様の話を聞いてしまったの」
「…………え?」
 食事の支度ができたことをレイテたちに伝えて欲しいと言う、ミーナに頷いて居間に戻ったところで、ルーはドア越しに二人の会話を聞いてしまったのだと。
「聞いて……」
 呆然と問い返すグレースに、ミーナは頷いた。そんな彼に、ルーが問う。
「ねぇ、グレースさん。先生は俺のことを捨てるの?」
「なっ?」
「俺の家族や親なんかを見つけて、どうするのっ? 俺が要らなくなったの? 俺をそこに帰すの? もう要らないから、捨てるんだっ!」
 ワッと泣き崩れるルーに、グレースは言葉を失った。
 捨て子であることを自分なりに過去のこととして、清算していたルーに、いまさら血縁者が見つかったところで混乱するだけでしかなかった。
 だから、レイテはルーに話さずに、事実確認をするために一人で出掛けて行ったのだが……。
「嬢さん……。若様は嬢さんを捨てたりするはずないスッよ」
「そんなのわかんないよっ! だって、俺はお父さんからもお母さんからも要らない子だって、捨てられたんだよっ? 先生だって……俺が嫌になったのかもしれない。でなきゃ、何で、俺の家族を見つけようなんて思うのさっ!」
 不安で何も考えられない状況にあるらしい。
(冷静になれば、考えれば、わかることなのに……)
 レイテがルーを捨てるはずなんてない。彼は世界が滅ぶのをいとわずに、少女の命が救われることを望んだのだ。
 その彼が何をもって、ルーを捨てると言うのだ?
 ルーのために生きることを決意したのに。
 果てしなく長い、尽きることのない不死の人生を、ルーのために捧げたのに。
「そんなに言うならっ!」
 グレースはルーの腕をつかんで、引き立たせた。
「若様のところに行こうスッよ! そして、自分の目で確かめればいい」
「…………グレース」
 止めるように差し挟んだミーナの声を、グレースは首を振って黙らせた。
「オレは、知っているスッよ。若様がどれだけ、嬢さんを大事に思っているのか。だからこそ、オレは信じられるスッ! 若様が嬢さんを裏切るはずがないってことを」
「…………っ」
 泣いて声が出ないルーを連れてグレースはレイテを追う決心をした。
 グレースはミーナを振り返り、言った。
「自警団の奴らに少し遅れるって、言っておいてくれ。それと昼飯は一緒に食おう。オレとお前と、若様と嬢さんの四人分な?」
 夫の言葉を受けて、ミーナは優しく微笑んだ。
「行ってらっしゃい」


 生まれてこなければ、良かったと思うことは何度もあった。
 あの日、あのとき、あの瞬間、もしも違う選択をしていたならば……。
 後悔は尽きることなく、精神を蝕んでいく。
 間違えたつもりなどなかったし、選択の余地もありはしなかった。
 目の前のことを受け入れるしか、生きていく道がなかったのなら……やはり、自分は生まれてこなければ良かったのだろうか?
 それでも、もう一度、あの人に会えたなら……。
 全てが許される気がした。
 都合のいい、夢想だとわかっていても……許して欲しいと、願う。


「許してください……」
 床に手を着き、土下座をする老人をレイテは悲しげに見つめ、首を振った。
「僕にはあなたを許す権限など、元からありません。顔を上げてください」
「お願いです、どうか……どうか……お許しを」
「僕はあなたを困らせに来たわけではないのですよ。どうか、顔を上げて」
 レイテは床に膝を着き、老人の顔に手を当てた。
 五十年という年月以上の皺を刻んだ老人の姿は、レイテには痛々しかった。
 赤い瞳は昔のまま。しかし、髪は半分以上が白く染まり、乾いた皮膚はカサカサで、もう既に百歳以上を数えたかのような老い具合だ。
「一つだけ、尋ねたかっただけです。どうして、ルーを捨てたのか」
「ルー……」
「あの子の名前です。ルビィ・ブラッド。僕が名づけました」
「…………子供は」
「元気に育ちました。元気すぎるぐらいです。今では僕の宝物です」
「ああ、やはり……あなた様は神様だ。あなた様に預ければ……きっと、幸せにしてもらえると思っていました」
「あなたの元では幸せにできなかったのですか? ずっと苦悩してきたのでしょう? あの子を捨てたことを。それほど思いながら、どうして、あの子を捨てたのですか?」
 レイテは老人を立ち上がらせて、彼が座っていた揺り椅子に腰掛けさせる。
 椅子が置かれているのは二階のテラス。眼下には綺麗に手入れされた庭が見下ろせる。
 屋敷は石造りの豪奢な建物で、それだけで老人の豊かさを物語っている。
 グレースから聞いた話だと、老人は金貸し業が成功して、莫大な財産を築き上げたらしい。四十年前に妻と死別後、男手一つで一人娘を育てあげた。現在、彼にはその娘だけが家族だという。
 ならば、その娘がルーの母親なのだろうか。では、父親は?
「あなた様に頂いた金貨で、ここまで財を成すことができました」
 庭を見下ろすレイテの横顔に、老人は言った。
「……豊かさが幸せに直結するとは限らないようですね。あなたは不幸せそうに見えますよ」
 レイテは横目で老人を見やり、寂しげに呟いた。
「幸せだと思っていました。あの日、あなた様に出会って、目の前が開かれたように明るくなった。あの瞬間、間違いなくあなた様は私の神様だった」
「生贄に選ばれて……それで僕と出会えたことを幸せだと、あなたは感じたのですか?」
「私の父は……酒が入ると手が付けられない乱暴者でした」
 昔語りをはじめた老人に、レイテは黙って耳を傾けた。
「そんな父に嫌気がさして、母は別に男を作って出て行った。それからというもの、父は酒が手放せなくなり……私は父の暴力をその身に受け続けていた。死ねばいい、と私は自分の父親をどれだけ呪ったことか」
「…………」
「ある日、恐れていたことに父は人様に手を掛けて殺してしまった。私は罪人の息子という汚名まで着せられることになった。そして、生贄の選別の折、私は選ばれた。街にとって、私は不必要な人間だったから」
「……あなたは僕に言いましたね。僕に食べられることで、僕の飢えが少しでも癒えるのなら、それだけで生まれた意味はあったのだろう、と」
「生まれてこなければ……そう何度、思ったことか。意味もなく朽ちていくことが怖かった。せめて、誰かの役に立てれば……そう思っていたのです。だけど、あなた様は噂に聞いたように人を喰らうものではなく、どこまでもお綺麗で優しく……そして、私に生きろと言ってくださった」
「…………僕にその言葉を言える資格があったのか、どうか」
 心の底で死を望んでいた自分が、よくもまあ、偉そうに言えたものだと、レイテは自嘲した。
「それでも、私は生きて良いのだと許された気がしました」
「…………人は誰かに許されて、初めて自分の存在を認められるのかもしれませんね」
「私のそれまでの人生には、誰も私に生きろなど、言ってくれなかった。母は私を捨て、父は私を罵るばかり、街の人たちは私を厄介者として扱った」
 老人は痩せた手で顔を覆うと、涙をこぼす。
「あなた様に出会って、私は生まれ変わった。そして、あなた様から頂いたお金を元に事業を始め、成功した。妻には早くに先立たれましたが、娘がいた。この幸せは永遠に続くものだと信じて疑わなかった……それなのに」
「何が、あったのですか?」
「……娘が誘拐されたのです」
「誘拐……」
「金欲しさの犯行でした。私は躊躇もなく身代金を払いました。娘の命には代えられないと思ったのです」
「……そうですね」
「娘は無事に帰ってきた。……しかし数ヵ月後、娘の腹には子供が」
「まさか……」
「誘拐された折に……。気付いたときには遅く、処置できなかった。生まれてきた子は私や娘にそっくりの赤い瞳の女の子でした」
「…………ルー」
 レイテはルーの出生に戸惑う。この事実を、ルーはどう受け止めるだろう。
(…………呪うだろうか? 生まれてきたことを……)
(だけど、ルー……僕は……)
「私は生まれてきた子には罪はないと思いました。私自身が犯罪者の息子と、謗られてきた。でも、父の罪は私には関係ないものだ。同じように、赤ん坊の父親がどんな男であろうと、子供には関係ない。そう思ったのですが……」
「娘さんですか?」
 レイテの問いに老人は小さく頷いた。
「娘にとって、赤ん坊は自らを汚された証。誘拐された際、かなり酷い仕打ちを受けたらしい娘は、子供を受け入れる余裕がなかった。それどころか、自ら手にかけようとして……」
 老人は指の間から、赤い瞳でレイテを見上げた。
「赤ん坊はここに置いておけないと思いました。罪もないのに、殺されるのはあまりに残酷です。ですが、私には娘を断罪することもできなかった。……それで、私は……」
「僕にルーを預けることを決めたのですね?」
「はい。あなた様なら……赤ん坊を幸せにしてくれると。……あなた様の都合も、赤ん坊の気持ちも考えずに、私はあの子を置き去りに……どうか、お許しください」
「人の幸せを願う気持ちを、許すも許さないもないと思いますよ」
 レイテは老人に近づき、彼と目線を合わせて告げた。
「僕がここに来たのは、あなたを責めるためではない。あの子が捨てられた理由と、そして、一言……どうしても伝えたいことがあったからです」
「伝えたいこととは……?」
 老人が見上げた先、銀髪の麗人は昔のままに優しく微笑む。
「あの子を……ルーを……ルビィ・ブラッドを僕に与えてくれて、ありがとう。あの小さな命を消さないでくれて、ありがとう」


 テラスの下で息をひそめていたルーとグレースは、上から聞こえてくる声に耳を傾けていた。
 ルーの出生にまつわるところでは、さすがにショックだったのか、少女は膝を抱えて座り込んだ。
 でも、今は……。
 赤い瞳から涙を流しながら、それでも前を見るように顔を上げて、言った。
「あのね、グレースさん」
 ルーの声に、グレースは傍らの少女を見下ろした。
「俺、幸せだと思う。お父さんやお母さんに要らない子だって、言われても。世界中の皆から、要らない子だって言われても……先生は俺を選んでくれた。それだけで俺は幸せだよ」
「嬢さんは要らない子なんかじゃないスッよ」
「うん……。でも、そんなこと関係ない。俺はきっと先生のために生まれてきたんだ。そして、これからも先生のために生まれてくるんだよ」
「……はい」
「俺……生まれてきて良かった」
 あの人のために生きよう。それだけでいい。それ以上の意味なんて要らない。


「さて、帰りましょうかね」
 唐突に、耳元で響いた声にグレースはギョッと目を剥いて、そちらを振り返るとレイテが何食わぬ顔で立っていた。
「わ、若様っ? い、いつの間に」
「隠れていたつもりでしょうがね。ルーの気配はどんなに離れていても、わかります。迎えに来てくれたのですね?」
 レイテはあえて何も言わずに、座り込んだ少女に問いかけた。
 目の前に現れたレイテにルーは立ち上がると、彼の胸の中に飛び込んだ。
「先生っ!」
「一緒に帰りましょう、ね?」
 ルーを優しく受け止めて、レイテは少女の耳元で囁く。
「うん!」
 ルーは満面の笑顔をレイテに返すと、彼の手を繋いだ。
 歩き出す二人の弟子をグレースは見送りかけて、慌てて追う。
「待ってくださいスッよ!」
 三人がテラスの下から出てきたところで、上から声が飛ぶ。
「レイテ様っ!」
 しわがれながらも強いその声に、三人が頭上を振り仰げば、老人がテラスの手すりにしがみ付くようにしていた。
 レイテはルーを抱き上げると老人に向かって言った。
「この子が、僕の宝物です。ルー、挨拶しなさい。あなたのお祖父様ですよ」
 ルーは泣いている老人を見上げて、笑う。
「あのね、俺を先生に会わせてくれて本当にありがとう。もしも、その涙が俺のために泣いているんだったら、もう泣かないでっ! 俺はとってもとっても、幸せなんだよっ!」
 レイテに抱き上げられた姿勢からルーは、大きく手を振る。
 老人は視力が乏しくなった目を見開いて、レイテの腕の中で幸せそうに笑う孫の姿を焼き付けた。
 その笑顔一つに、全てが許された気がするというのは間違っているのだろうか。
 それでも、どうか……。
 いつまでも、笑い続けていて欲しいと思う。


「お腹すいたー」
「ああ、オレもスッよ。よくよく考えたら、朝飯食ってないスッ! 早く帰りましょ。ミーナが昼飯を用意してくれているスッから」
「そうですね、帰りましょう」
「うん!」
 明るく元気に頷くルーに、レイテは笑顔を返した。


 君が生まれてきたことが嬉しい。
 君と出会えたことが、幸せ。
 君のことを思う、ただ、それだけで胸がこんなにも熱くなるから。
 どうか、生きて……。
 例え、繋いだ手が離れてしまっても……どれだけの時間が二人の間に立ちはだかっても。
 君を探し出して見せるから……。
 君が生まれた意味はここにある。僕が生きる意味も君にある。
 だから、僕たちの物語は終わらない。



                        「魔法使いとその弟子 完」

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本編完結後の番外編は、本編からリンクで繋がっていません。目次から改めて入り直してください。(番外編のノリをご゛理解くださる方だけ)
 
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